LINE 株式会社 広告事業部の木原宏樹氏は 4 年前より livedoor Blog, livedoor NEWS, NAVER まとめなどのネットメディアのオンライン ネットワーク広告の運用を担当し、AdSense をご利用いただいております。これまで木原氏には、「熱血!AdSense 部 春学期 ~広告による収益の最大化~」や「熱血!AdSense 部 夏学期 最適化のヒント~実践編~」のゲスト講師 として参加いただきました。

 木原氏に現在に至るまで、企業としてどのように AdSense を運用してきたのかという点についてお話を伺いました。



「今から 4 年前、何も知らない自分が AdSense の運用担当に」

 会社としては 7 年前より AdSense を利用していますが、担当を引き継いだのは今から 4 年前です。AdSense の収益構造や専門用語についてほとんど知らない状態からスタートしました。そのため、まずは管理画面で使われている専門用語の意味やその数値が持つメッセージ等、前任者のフォローも得ながら勉強し、実践しながら経験を積んでいきました。


「社内広報は AdSense 新聞」


 以前、社内で AdSense 新聞 というものを作っていました。私の前任者が始めたものですが、AdSense 新聞は毎日オフィスの出入り口に張り出され、各チームの AdSense による売り上げ予算や実績、効果の高かった広告の配置などの施策が記載されていました。

 当時はどうしても純広告の力が強く、ネットワーク広告というのは空き枠を補填するという存在でしたが、ネットワーク広告でもこれだけパフォーマンスを出せるということを正確に理解してもらう必要がありました。ネットワーク広告に変なアレルギーを持たずに、フラットな目線でマネタイズを考えられるのはこういった社内広報の影響もあるかと思います。


「他社の成功事例は最も有力な材料」

 他社の状況は、様々な規模のサイトを常に意識してチェックをしています。例えば広告枠の配置位置や広告枠数はどうか、また、同業者間でも月一で交流会を行っています。交流会では、効果の高かった施策案等の情報交換をしています。新しい施策を行う際、社内調整の材料として一番有力なものは「他社事例」なので、ここには個人的にお金も時間もかけています。


「とりあえずやってみよう、
ダメだったらすぐに戻せばいい」

 社内では、新しい AdSense の最適化案があるといち早く取り入れる体制が整っています。インパクトの大きい施策では事前に A/B テストも行いますが、細かい施策に関しては口頭ベースで相談し、現場承認後、すぐにデザイナーがモックアップを作ってくれます。場合によっては午前中に提案したものが、午後には既に実装されていることもあります。
 
 通常、企業として大きくなってしまうと、新しい配置や広告枠を導入するには社内調整などに多くの時間を要してしまうところも多いです。しかし、早く動かないとその日数分の収益の機会損失に繋がりかねないので、「とりあえずやってみよう、ダメだったらすぐに戻せばいい」というスタンスで、やると決めたらできる限り最短で実行します。




「AdSense の運用で企業に一番必要なものは組織力」

 AdSense を含め、ネットワーク広告の運用で一番重要なものは組織力だと思います。もちろん業界のトレンドやアイディア力は必要ですが、それも現場の協力が得られなければどうしようもありません。施策を提案する私、それを承認する上司、実際に広告コードを差し込んでデザインを調整するディレクター、デザイナーまで、複数のスタッフが関わります。このメンバーの一体感があるかないかで実装のスピードは大きく変わりますし、そのスピード次第で収益額も大きく変わります。おそらく私達の一体感、スピード力はどこにも負けないんじゃないでしょうか。


「最近最も効果の高かった施策は、
売り上げが 1.6 倍 - 1.8 倍のダブル レクタングルの実装と、
 1.4 倍になった 50 ピクセルの UI 整理」

 最近最も効果のあった施策は?と聞かれると、必ず答えるのがニュースの記事下にレクタングルを横に 2 つ並べる 「ダブル レクタングル」です。普通に考えてみると、クリックが分散するだけかもしれないと思っていましたが、A/B テストもまずまずだったので「ダメだったらすぐに戻せばいい」精神で、とりあえずやってみました。

 実装してみると、AB テストで予想されたインパクトをはるかに超え、売上げは 1.6 倍~ 1.8 倍に!今では、他社の方もどんどん導入されているようですし、業界のスタンダードになりつつあるかと思います。※参照先 
 
 また、現場からの提案でニュース(スマートフォン)のソーシャルボタン整理を 50 ピクセルに調整しました。50 ピクセルに UI を調整しただけで、売上げは 1.4 倍になりました。※参照先


「AdSense 運用のポイントは?」

 個人でウェブサイトを運営されている方は、企業と比べて運用の障壁は少ないかもしれません。そのため、様々なメディアを参考にして、AdSense プログラム ポリシーを準拠しながら、いろいろな実装を試して見てください。ポイントは最初から先入観を持たないことだと思います。企業で運営されている方は、現場の担当者が失敗を恐れずスムーズに PDCA のサイクルをまわせる体制を作ることが最重要だと思います。

 先日社内で時間をかけて 3 つの実装の AB テストを行いましたが、まずまずの効果が見られたものは 1 つだけでした。しかし、現場からの回答は「効果がないことが分かっただけでも良かった」というポジティブなものでした。仮説が崩れることは気持ちのいいものではありませんが、このパターンはうまくいかないという知識が 1 つ 1 つ社内にノウハウとして溜まり、少しづつですが、筋肉質な運用体制になっていきます。

----------------------------------------------

スタッフの一体感と、「とりあえずやってみよう。ダメだったすぐに戻せばいい」というスタンスでスピード感のある AdSense の最適化を行っている LINE 株式会社 木原氏のお話は、新しい最適化の実装になかなか踏み出せないサイト運営者様にとって、参考になったのではないでしょうか?

引き続き木原氏にお話をお伺いしたいと思っておりますので、第 2 回目もお楽しみに!

Posted by Eri Shikamura - Inside AdSense Team

2013 年 10 月 2 日