「どのような方法で収益化するか?」というのはアプリデベロッパーの皆様にとって大きな悩みの 1 つです。

 有料アプリ販売・アプリ内課金・広告掲載のいずれかの方法が多いですが、今回はアプリ内課金と広告掲載の両方を 1 つのアプリの中で実現している株式会社リンクキットのアプリケーション「サムライディフェンダー」について、代表取締役社長の竹内 啓二氏に話を伺いました。アプリの収益化の話とあわせて、海外展開をされる際に気をつけていることについてもお話を伺っています。

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【ゴール】
  • アプリの収益の最大化
  • アジアを中心とした海外展開
【アプローチ】
  • 広告掲載とアプリ内課金の両方をアプリに実装
  • 進出先の国ごとに現地パートナーと提携
【結果】
  • ユーザビリティを損なうことなく、課金収益の 15 - 30 % を広告掲載によって獲得
  • 低リスク・省リソースの海外展開を実現
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株式会社リンクキット 竹内氏 [以下 竹内]
 リンクキットは 2011 年 2 月に創業し、主にスマート フォン向けソフトウェアの企画・開発を行っています。サムライディフェンダーは、攻めてくる敵兵を弓矢で撃退してお城を防衛する、タワーディフェンス系というジャンルのゲームです。
 iOS 版を今年 2013 年の 3 月にリリースし、Google Play 版も 5 月にリリースしています。2013 年 9 月現在、累計 60 万ダウンロードを達成しました。

Google AdMob 坂本 [以下 坂本]
 サムライディフェンダーは、「サムライ」がテーマですが、海外への展開はされていますか?

[竹内]
 6 月から全世界に向けた配信を開始しました。日本以外でダウンロードが多いのはベトナム、台湾で、現在注力しようとしているのは中国です。中国では Android プラットフォーム のシェアが高いにもかかわらず Google Play がサービスを展開しておらず、代わりにローカルのアプリマーケットが数百個乱立しているようなので、対応に苦心しています。

[坂本]
 数百個もあるんですか!それは大変ですね。

[竹内]
株式会社 リンクキット
代表取締役社長 竹内 啓二氏
実際には 10 個程のマーケットに対応することができれば、7 割超のユーザーはカバーできるようです。しかし、変化が激しいので実態がつかめていません。現地のことをわからないでビジネスをするのは、やはりリスクだと思います。そのため現地の方にパートナーになってもらい、ユーザー サポートをはじめとしたある程度の業務はお任せしています。しかも、現地のパートナーには実際に会うことなく、全てメールでのやり取りで決めています。後日談ですが、先日行われた東京ゲームショーで初めて代表の方にお会いすることができました。



[坂本]
 実際に会ったことのない方とパートナーを組んでるいんですね!普通、会ったことのない方、しかも別の国の方とメールのやり取りだけでパートナーを組む、というのは勇気がいるかと思います。パートナーを選ぶ上で、企業のサイズ以外に気をつけている点はありますか?

[竹内]
 大手企業と組むのではなく、まだ規模が小さく、我々と一緒に頑張ってくれそうなパートナーを選んでいます。成功することがお互いにメリットになるスキームを作ることで、パートナー自身がモチベーション高く協力してくれます。

アプリの収益化について


[坂本]
 サムライディフェンダーは、アプリ内課金と広告のどちらもマネタイズ手段として取り入れていますよね。アプリ内課金は、カジュアルゲームのデベロッパーの皆様にとっては少しハードルが高く感じてしまうのではないでしょうか?

[竹内]
 そうですね。アプリ内課金は、上手くいくと収益的なリターンは大きいですが、一方でゲーム性をしっかり設計しないと誰も課金してくれない可能性もあります。

[坂本]
 サムライディフェンダーではアプリ内課金ユーザーの比率はどのくらいですか?

[竹内]
 日本国内だと 10% 弱、全世界では 5% 弱がアプリ内課金のユーザーです。ですが収益額でいうとアプリ内課金によるもののほうが広告によるものより大きく、広告による収益はアプリ内課金による収益のだいたい 15〜 30% 程です。アプリ内課金か広告かのどちらか片方だけでしたら、大きな機会損失を出してしまっていました。

[坂本]
 なるほど。今後、アプリ内課金も広告もどちらも入れるのが一般的になると、アプリデベロッパーさんはより収益性を上げることができそうですね。
 しかし、現実にはアプリ内課金か、広告か、どちらか一方でしか収益化していないデベロッパーさんが多いように感じます。何が大きなハードルになっているのでしょうか?

グーグル株式会社
AdMob チーム 坂本
[竹内]
 広告で収益化を行っているカジュアルゲームデベロッパーは、課金設計に難しさを感じているのだと思います。ユーザーがお金を払いたいと思うようにゲーム性を作り込まないといけないのですが、彼らにはチャレンジングなことのようです。

[坂本]
 課金機能だけを実装しても誰も使ってくれないと。

[竹内]
 アプリ内課金設計は経験が少ないと難しいと感じました。一方、大手のゲーム会社や、昔からコンソールゲームを作っていたような方は、1 ユーザーあたりの売上が少ないという理由で、広告よりも課金を好む傾向があります。また中には「広告をゲームに入れるなんてけしからん」という価値観があるのでは、と感じます。

[坂本]
 実際のところ、ユーザーは広告をどれぐらい邪魔なものだと感じるのでしょうか。広告を掲載することで、アプリ内課金による収益に悪影響はありましたか?例えば、アプリ内課金を行うユーザーが減った、など。

[竹内]
 悪影響は正直ほとんど感じられません。まずバナー広告に関しては、プレイに集中するゲーム中は表示していません。クリック率(CTR) もそれほど高くないので、誤クリックを誘発しているということもないです。あくまでゲームがメインで広告はサブという位置付けを守っておりますので、ユーザー エクスペリエンスを阻害していることは無いと思います。会社としては純粋にプラス収益に働いているということです。

[坂本]
 なるほど。誤クリックを誘発するような広告の配置は、ポリシー違反にもなってしまいますものね。

[竹内]
 またバナー広告以外にオファー ウォール広告 (*注 1 ) も実装しています。もちろん我々の収益源となっているのですが、それだけでなくユーザーにとっても選択肢の幅を広げていると言えます。課金をどうしてもしたくないユーザーに対しても、アイテムを入手する方法を提供しているからです。これらをはじめ、一部のたくさん課金してくださるユーザーに依存しないマネタイズを常に模索しています。


[坂本]
 ありがとうございました。海外展開やマネタイズに悩んでいるデベロッパーの皆様に、是非サムライディフェンダーの事例を参考にしていただきたいですね。

*注 1 :オファーウォール広告:ユーザーが一覧化された特定の行動(サイトの閲覧、アプリのダウンロード等)を行うことで、アプリ内で仮想通貨(ポイント、コイン)などを獲得できるインセンティブ付きの広告

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